皆さんもご存知のようにトールで働く集配職、路線職、整備職の賃金項目の一つである能率手当は、「能率手当=賃金対象額-時間外手当A」という計算式で算出されます。
したがって、
時間外手当A+能率手当(賃金対象額-時間外手当A)
=時間外手当A-時間外手当A+賃金対象額
=賃金対象額
となります。
このように残業代である時間外手当Aを差し引いて能率手当を計算し、その上で時間外手当Aを支払っても、実態において残業代を支払っているとは言えないということがわれわれ原告の主張です。
被告会社の主張 -能率手当は、成果主義賃金であるー
このわれわれ原告の主張に対し、被告会社は「能率手当は、成果主義賃金である。成果主義賃金は、より短時間の労働によってより大きな成果を実現した者により多くの賃金を分配するという制度」であるから、残業時間の残業代を賃金対象額から差し引いても合法であり、多数派組合であるトール労組とも合意していると会社は主張しています。
能率手当は「成果主義賃金」である?こんな説明を会社から聞いたことはありますか。
成果とは、つまり賃金対象額のことです。努力と工夫をして残業をせずに、あるいは少ない残業でより多くの成果(賃金対象額)を実現すれば、多額の賃金を得られるぞ。努力と工夫が足りずに残業をしても賃金対象額から残業代を差し引くからな!漫然と仕事をして残業代稼ぎできると思ったら大間違いだ!
平易に言えば、以上が成果主義賃金についての会社の主張の核心です。能率手当について、このように入社時に説明すれば、誰もトールに就職しない。事実、正社員になった途端に辞めていく集配労働者が多いのは、騙されたとの思いがあるからである。正社員になったら「5万円も賃金が下がったから辞める」という話を良く聞きます。
会社の裁判での主張に耳を傾けてみよう。「残業時間が増えても、実際に支給される賃金に大きな違いが生じないとの点については、残業時間が増えても単に漫然と残業しているだけで成果が向上しなければ指摘のような結果になることは事実である」、「それは成果主義賃金の性格に由来する当然の結果と言う他ない」。能率手当は「漫然と労働時間を増やしても賃金の増額には必ずしも結び付かず、逆に長時間労働を抑制して短時間(残業をせずに)で能率を向上させることによって多額の賃金を得ることができるのだと従業員に意識付けしようとするものである」(会社答弁書より抜粋)。
集配労働者なら、この会社の主張がどれほど馬鹿げた、そして集配労働者を見下した主張であるかは分かると思います。
残業時間が増えるほどの仕事をさせているのは、会社であり、集配労働者が漫然と労働時間を増やしているのはない。集配労働者は、懸命にその仕事を消化するために残業をしており、漫然(チンタラ)と残業をしているのではない。それに対し、「漫然(チンタラ)と残業をしているから残業時間が増えても賃金がさほど増えないのだ」というのは、言いがかりではないか。1時間当たり、300円、500円しかならない集荷賃金対象額(成果)でも会社の業務命令のもとで集荷残業をして顧客の荷物を集荷している。
これに対し、残業をしても成果(賃金対象額)が少ないのは、漫然と残業をしているからだ言われれば、この会社はもうダメだと辞めていくのは当然です。
能率手当は、成果主義賃金ではない
裁判において、会社は、集配労働者の努力と工夫によって、賃金対象額は増減すると主張し、これを前提に「能率手当=賃金対象額-時間外手当A」の計算式は、残業をせずにより多くの賃金対象額を実現すれば、多額の賃金、つまり能率手当を得られると主張してきました。
本当にそうなのか?集配員の努力や工夫で賃金対象額は増減するのか、しないのかは、まず裁判で争われた点です。われわれ原告は、集配労働者の努力や工夫で賃金対象額は増減するという主張を前提にした会社の主張は、実態からかけ離れた空理空論であり、偽りの主張であることを暴き、完璧に会社主張を論破しました。この点については、次回組合ニュースから報告したいと思います。
労評交運労トール労組報告
会社はさらなる努力を!(冬季一時金報告)
裁判報告
10月15日、裁判の最大の山場である証人尋問が大阪地裁でありました。原告である労評トール広島分会の組合員2名、被告会社側から1名の証人尋問がありました。
裁判は、この間の双方の主張をまとめた最終準備書面と呼ばれている書面を、今年中に提出し、おそらく判決は、来年の2月頃になると思われます。
今後、判決に向けて、裁判で会社が主張してきたことが、トールの実態とかけ離れた主張であるかを、連続して報告していきたいと思います。
例えば、会社は、集配労働者の努力や工夫で賃金対象額を増加させることができる。したがって、残業せず、あるいは少ない残業で多くの賃金対象額を稼ぐように努力や工夫をすれば、多大な能率手当を得ることができる。能率手当が、少ないのは、努力や工夫が足りないからだ、またチンタラ仕事をしているからだというような主張をしています。
われわれ原告は、配達先や集荷先は、会社が決めるのであって、また配達量も集荷量も顧客先の事情によって決まるのであって、集配員の努力や工夫で増加さすことはできないと主張しています。また集荷する限り、残業にならざるを得ないと主張しています。
今後連続して、裁判での被告会社の主張を暴いていきます!
配達時間帯に追われ集荷時間帯に追われ、まともに昼休憩さえ取ることもできない仕事量を与えられて働いている集配員に取って、会社の主張がいかにデタラメであるかは分かると思います。
現行の賃金規定、「能率手当=賃金対象額-時間外手当A」は、絶対に変えさせるようにしていかなければなりません。そのために、裁判での証人尋問を中心にして、今後、シリーズで連続して、裁判報告を行なっていきたいと思っています。
2017年2月28日、国際自動車第1次訴訟最高裁判決が出されました。一部の報道では労働者側が敗訴したかのような記事が出ていますが、主文は、破棄・差し戻しでした。もう一度高裁でやり直しになったということですが、この判決について労評顧問弁護士であり、この事件の担当弁護士である指宿弁護士から解説をしてもらいましたので、その文章を掲載します。