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労評東海地方本部

タクシー、トラック業界に働く労働者のみなさん❣ 暁法律事務所から転載

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タクシー、トラック業界に働く労働者のみなさん❣ 暁法律事務所から転載

国際自動車事件、最高裁で勝訴判決!

2020-03-31

 3月30日、最高裁判所第一小法廷は、国際自動車事件(第1次訴訟・第2次訴訟)につき、原審(東京高裁)の一審原告(=労働者)敗訴の判決を破棄し、東京高裁に差し戻す判決を出した。一審原告勝訴の判決である。
 原審判決は、被上告人の賃金規則は、基本給及び歩合給(1)等が「通常の労働時間の賃金」に当たる部分となり、残業手当、深夜手当及び公出手当等が「割増賃金に当たる部分」に該当するから、2つの部分が明確に区分されており、割増賃金の額は通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として労基法37条等に定められた方法によって算出した金額を下回らないから、未払賃金はないと判断していた。これは、極めて形式的な判断である。つまり、形式が「通常の労働時間の賃金の部分」と「割増賃金に当たる部分」に分かれていればいいという判断である。
 これに対して、最高裁は、「通常の労働時間の賃金」と「割増賃金に当たる部分」が判別できるというためには、被上告人が割増賃金と主張する手当が、「時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要する」とした。つまり、形式論ではなく、「時間外労働等に対する対価」であるかどうかという実質論が必要だと言ったのだ。そして、「時間外労働等に対する対価」として支払われているかどうかは、「当該労働契約に係る契約書等の記載内容のほか諸般の事情を考慮して判断すべきであり」、そして、「その判断に際しては,当該手当の名称や算定方法だけでなく,(中略)同条の趣旨を踏まえ,当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け等にも留意して検討しなければならない」とした。つまり、割増賃金が支払われているからよいとするのではなく、「賃金体系全体における当該手当の位置付け等にも留意」せよとしたのである。これが、重要な視点である。確かに、形式上、割増賃金は支払われている。ただし、それと同額が歩合給(1)の計算において差し引かれている。このような「賃金体系全体における当該手当の位置付け」に留意せよと言っているのだ。木を見て森を見ないような判断ではだめだ、と言うのである。
 これを前提に、判決は、被上告人の賃金規則につき、「当該揚高を得るに当たり生ずる割増賃金をその経費とみた上で,その全額をタクシー乗務員に負担させているに等しい」と評価する。さらに、歩合給(1)がゼロとなり、全てが割増賃金として支払われる場合は、「労働基準法37条の定める割増賃金の本質から逸脱したもの」と評価する。
 さらに、判決は、被上告人の賃金規則は、「その実質において」、「元来は歩合給(1)として支払うことが予定されている賃金」を一部分を「名目のみを割増金に置き換えて支払う」ことになるという。実質論で検討するというのである。そして、本件賃金規則における割増金には、「通常の労働時間の賃金である歩合給(1)として支払われるべき部分を相当程度含んでいる」という。さらに、「割増金として支払われる賃金のうちどの部分が時間外労働等に対する対価に当たるかは明らかでない」としつつ、どの部分が時間外労働等の大家にあたるか明らかでないから、「通常の労働時間の賃金の部分」と「割増賃金に当たる部分」の判別ができないことになる。判別ができなければ、「割増賃金に当たる部分」はないことになる。
 その結果、「被上告人の上告人らに対する割増金の支払により,労働基準法37条の定める割増賃金が支払われたということはできない。」という結論が導かれる。明快な判断であると思う。

 原審判決のような形式的な判断がまかり通るなら、労働基準法37条は死文化し、無意味な規定になる。いくらでも潜脱が可能になる。これは、戦後労働法制の重要な中心的部分を破壊することにつながる。すなわち、原審判決は、労働法制を破壊し、更には、憲法に基づく戦後の民主主義的体制自体を否定するようなものであった。
 最高裁に判断により、労基法37条は死文化しなかった。戦後労働法制は最高裁による破産宣告を免れた。

 国際自動車と同様の賃金規則はタクシートラック等で横行している。例えば、今、私と中井雅人弁護士で闘っているトールエクスプレス事件控訴審は、本件賃金規則と極めて類似し、本質的に同じものである。このような労基法37条に違反する賃金規則が多くの会社でまかり通り、また、既存の労働組合はこれと闘ってこなかった。いや、むしろ、積極的に導入に協力し、または、容認してきたいのである。
 
 これからの闘いにおいて、本件訴訟を闘ってきた国際全労とすべての支援労働者・労働組合は、この最高裁判決を武器に、労働者の権利を確立し、労基法違反を許さないために、団結して闘っていく。全国のタクシー・トラック、そしてすべての産業で働く労働者の皆さん。共に闘おう!。

 本件の訴訟代理人は、私と谷田和一郎弁護士である。

タクシー乗務員のみなさん!(暁法律事務所・日本労働評議会相談窓口)

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