労評交運労トール労組報告
会社はさらなる努力を!(冬季一時金報告)
裁判報告
10月15日、裁判の最大の山場である証人尋問が大阪地裁でありました。原告である労評トール広島分会の組合員2名、被告会社側から1名の証人尋問がありました。
裁判は、この間の双方の主張をまとめた最終準備書面と呼ばれている書面を、今年中に提出し、おそらく判決は、来年の2月頃になると思われます。
今後、判決に向けて、裁判で会社が主張してきたことが、トールの実態とかけ離れた主張であるかを、連続して報告していきたいと思います。
例えば、会社は、集配労働者の努力や工夫で賃金対象額を増加させることができる。したがって、残業せず、あるいは少ない残業で多くの賃金対象額を稼ぐように努力や工夫をすれば、多大な能率手当を得ることができる。能率手当が、少ないのは、努力や工夫が足りないからだ、またチンタラ仕事をしているからだというような主張をしています。
われわれ原告は、配達先や集荷先は、会社が決めるのであって、また配達量も集荷量も顧客先の事情によって決まるのであって、集配員の努力や工夫で増加さすことはできないと主張しています。また集荷する限り、残業にならざるを得ないと主張しています。
今後連続して、裁判での被告会社の主張を暴いていきます!
配達時間帯に追われ集荷時間帯に追われ、まともに昼休憩さえ取ることもできない仕事量を与えられて働いている集配員に取って、会社の主張がいかにデタラメであるかは分かると思います。
現行の賃金規定、「能率手当=賃金対象額-時間外手当A」は、絶対に変えさせるようにしていかなければなりません。そのために、裁判での証人尋問を中心にして、今後、シリーズで連続して、裁判報告を行なっていきたいと思っています。
2017年2月28日、国際自動車第1次訴訟最高裁判決が出されました。一部の報道では労働者側が敗訴したかのような記事が出ていますが、主文は、破棄・差し戻しでした。もう一度高裁でやり直しになったということですが、この判決について労評顧問弁護士であり、この事件の担当弁護士である指宿弁護士から解説をしてもらいましたので、その文章を掲載します。
2018年2月15日、国際自動車第一次訴訟差戻審の判決がありました。「会社には未払いの残業代はない。」という不当かつ残念な判決で、原告団は判決後すぐに上告をしました。
この判決がでた直後に、原告団代理人弁護士は次のように話していました。
「1次訴訟差戻審の判決は、不当かつ残念な判決でした。弁護団・原告団は判決後すぐに上告をしております。
本件では、最高裁の結論は既に決まっていますので、最終的には、その最高裁の結論によることになります。高裁で負けていても覆る可能性がありますし、仮に勝っていたとしても覆る可能性があります。
通常、最高裁で差し戻された場合には、どちらを勝たせるべきか明らかなことが多いのですが、本件の最高裁判決は、例外的に結論が明確ではありません。1次訴訟でも2次訴訟でも、高裁の裁判官から、最高裁判決の読み方がわからないと率直に言われました。
これまでの判例の流れから、最高裁は労働基準法37条の解釈について非常に厳格ですので、結論は当然ながらわからないのですが、高裁の判断が覆る可能性が高いと弁護団では考えています。
いずれの結論でも、最高裁判決を早く出させることが重要ですので、今後もできる限り早く続きを進めていきたいと思っております。」
また、指宿弁護士は、判決について次のように批判しています。
「歩合給は労働効率性を重視する成果主義賃金なので、割増賃金の控除も許されるというとんでもない理屈の判決であり、もし、これが確定すれば、労基法37条が死文化してしまう(無意味な規定になる)とんでもない判決で、固定残業代に関する従来の最高裁判決にも反する判断で、これを最高裁が認めるとは考えにくいと思われます。
また、歩合給は労働効率性を重視する成果主義賃金なので、歩合給の計算で割増賃金を控除することには合理性があり、『通常の労働時間の賃金』に該当するということにも問題はない、という判決だということです。
さらに、賃金規定の合理性や明確区分性該当性を基礎づけるために、労働効率性や成果主義ということを持ち出して、判決は苦しい説明をしています。これは、最高裁の本件判決及び他の固定残業代等に関する判断とは違っている判断だと思います(最高裁は、もっと厳格に、ある意味、数学的な判断をしていると考えています。)。」
今回の差し戻し審の判決では敗訴ですが、闘いの舞台は最高裁に移り、最高裁で勝訴できる可能性は十分にあります。今後の最高裁での逆転勝利に向けて労働者が団結して闘いましょう!
2017年末の宮城県労委にて会社側の不当労働行為が認められた救済命令に対して、会社が異議申し立てを行い始まった中央労働委員会での争いは、9月11日の中央労働委員会の期日において、和解締結となりました。
和解内容は以下のとおりです。
和解内容
1.会社(株式会社北上京だんご本舗)は、労働関係諸法令を遵守する。
2.会社及び組合(日本労働評議会)は、相互の立場を尊重し、労使対等の原則のもと、信頼と理解を深めた良好な労使関係の構築に努める。
3.会社は、宮城県労働委員会が以下のとおり本件(中労委平成30年(不再)第1号)初審命令を発したこと及び新たに不当労働行為救済申立てが行われた事実を重く受け取め、今般の労使紛争に至ったことについて遺憾の意を表する。
(1)日本労働評議会北上京だんご本舗分会のA分会長を解雇したことが、労働法第7条第1号に該当すること。
(2)団体交渉に応じなかったこと、議事録及び合意書作成に向けて対応しなかったことが、労組法第7条第2号に該当すること。
(3)組合に対し解雇を示唆する等の言動及びビラ配布の中止を求める発言を行ったことが、労組法第7条第3号に該当すること。
4.会社は、A分会長に対し、本社工場営業部室において、他の営業業務社員と差別することなく従前を踏まえた営業業務を行わせることとし、例えば、催事等の販売業務のみに継続して従事させること等がないようにする。また、社内ネットワーク内の情報の取り扱いや、工場、事務所への立ち入り等について、他の営業業務社員と同様とし、差を設けない。なお、本項の運用について疑義が生じた場合には、会社と組合は当該疑義の解消に向けて交渉を行うこととし、また、必要に応じて、宮城県労働委員会のあっせん制度等を利用することとする。
5.会社は、A分会長に対し、組合員であること、正当な組合活動をしたこと等を理由として、同人の身分や待遇、業務内容又は労働環境等について不利益な取扱いは行わない。
6.会社は、組合及びA分会長に対し、正当な組合活動を非難ないし妨害したり、組合の存在そのものを否定するような発言を行わない。
7.会社は、組合から、組合員の待遇又は労使関係上のルール等に関わる事項等について団体交渉の申入れがあったときには、速やかに応じる。なお、団体交渉の開催日時、時間、議題、場所等については、事前に双方で協議の上決定する。
会社及び組合は、団体交渉とは上記事項について合意を形成することを主たる目的として交渉を行うものであるということを十分理解の上、、自らの主張や見解のみに固執することなく、相互に理解と納得を得られるよう努めるなど、合意に向けて誠実に団体交渉を行うこととする。
8.会社は、A分会長に対し、平成28年(ワ)第1517号地位確認等請求事件判決の主文第2項及び第3項で命じられた金員のうち未払いとなっているもの(別紙のとおり)について、平成30年12月末日限り、A分会長の指定する口座に振り込む方法で支払う。(なお、A分会長が負担すべき租税及び社会保険料等個人負担分は、会社において控除した上で振り込むこととする。)
9.会社は、組合に対し、解決金として金60万円について、分割し、組合の指定する口座に振り込む方法で支払う。
なお、各支払について、特段の事情なく1週間以上の滞納が生じた場合は、会社は、分割支払の利益を喪失し、直ちに残額を支払うこととする。
10.会社及び組合は、本和解について公表することができる。ただし、本和解について勝敗の解釈はつけない。
11.組合は、宮城県労働委員会に平成30年6月28日付けで行った不当労働行為救済申立てについて、本和解成立後速やかに取り下げるものとする。
12.会社と組合及び阿部分会長は、本件に関し、本和解条項に定めるほか、何ら債権債務が存在しないことを確認する。
平成30年9月11日
中央労働委員会
審査委員 松下淳一
参与委員 高橋洋子
参与委員 宮近清文
株式会社北上京だんご本舗
代表取締役 大久保純孝
日本労働評議会
中央執行委員会委員長 長谷川清輝
利害関係人 A分会長