香流工業(株)は、亜鉛、アルミを原料とした金属部品を製造する中小企業で、愛知県長久手市に本社工場があり、その他に工場が二つ、営業所が一つあり、全体で従業員は200名ほどです。鋳造から成型までの一貫した生産ラインを持っていることを強みとして、同業種のなかでも高い利益を上げている会社として、評価されています。しかし、実際は、現場労働者の賃金は愛知県の最低賃金と同じ水準で、一方で専務や社長に気に入られた人だけが昇給するという、賃上げやボーナスも査定100%で、えこひいきが甚だしく、専務と社長は、現場労働者を都合よく働かせて、まるで自分たちの利益を上げるための道具のように扱っています。こうして労働者を金儲けの道具のように徹底して搾取することによって、利益を上げているのが実態です。このような香流工業の経営者、資本家は野坂一族です。
これに対して、会社の労働者に対する考えや扱い方を変えたいという切実な思いから、現場で働く労働者同士で話し合い、労評(正式名称は日本労働評議会、本部は東京にある全国組織の合同労組)に相談をして力を借りて、2022年10月に労働組合を結成しました。
組合結成を通知した直後から、社長や専務は、組合を敵視した行動を取ってきました。結成直後に、「組合活動について、社内からも、近隣からも苦情が出ている」などと、根拠のない言いがかりをつけてきたり、賃金問題についての追及に対しては、数字をごまかした資料を出してきたり、団交の席上で組合員個人に対して、例えば、何の根拠も示さず、セクハラをしているというような誹謗、中傷が繰り返されてきました。しかし、このような会社の不誠実な対応に対して、「会社あっての労働者、労働者あっての会社」をスローガンに掲げ、健全な労使関係こそ企業利益を高めていく核心と考え、一歩も引かずに社長や専務を批判し、追及しています。会社側は、組合からの追及には何一つ、まともな反論はできず、その場しのぎに必死になり、嘘をついて、組合員を誹謗、中傷したり、また団体交渉を先送りして、逃げ回っています。
そのなか、去年4月から賃上げについて、会社と交渉を行ってきました。組合は、会社の経営資料を分析し、世間の同業種同規模の昇給額とも比較しながら、理にかなった賃上げ要求をしてきました。しかし、会社は、組合の要求にまともに答えず、又答えられず、「設備投資に回したい」と言い、一枚の資料を提出してきましたが、生産計画としては具体性のない、会社のやりたいことの羅列でしかなく、なんら説得性のないものでした。
会社は非常に主観的で、かつ組合敵視の態度であり、この状況を打開し交渉を前進させること自体、極めて困難な状況にありました。このような状況にあって、局面打開に向けて事務折衝を呼びかけた時に、会社側弁護士が極めて重大な発言をしました。それは、「組合員以外の方は賃上げを納得している」と言ったのです。ところが、現場は、納得するどころか、組合の主張に支持、共感する労働者が多数であり、会社のいいかげんな態度に対する不満が強くなっていました。そこで、この会社側弁護士の発言を、「組合ニュース」に載せ、現場労働者に伝えたところ、「そんなことはない」、「専務や社長に直接言えるわけがないでしょう」、「みんな我慢しているんだ」と、次々と不平不満が噴出してきました。
私たちは、賃上げ要求を、組合員だけではなく、現場労働者みんなの要求、総意として会社に突きつけることが、大きな力になることに確信を持ち、それまでの「組合対会社」の関係から「労働者対会社」の関係に作り変え、労働者の総意を実現する交渉へ切り替え、取り組んできました。
紆余曲折(うよきょくせつ)がありながらも、今年3月の団体交渉では、会社から「和解」を切り出してきました。私たちは、労働委員会に対して、会社の組合に対する違法行為、すなわち不当労働行為の数々を訴え、しかも優勢に「調査」という審議を進めていました。会社は、その訴えを取り下げてほしい、と言ってきたのです。私たちも、会社が私たちの要求に真面目に答えることを期待して、和解交渉を進めることに合意しました。
ところが、会社は、「個人面談」で、突然、70歳以上は来年3月31日をもって雇止めにすると通告し、「国の方針だから」などと言ってまともな説明もせず、権力を笠に着て高齢の労働者に同意させる等、非組合員、とりわけ組合を支持するパート労働者を狙って、攻撃してきました。また、組合員に対してもパワハラ、不当労働行為をやる等、「和解」に向け誠実に交渉するどころか、不当、違法な行為を重ねてきました。それでも私たちは、最初は粘り強く、話し合いによる解決をめざしてきました。ところが、会社は、ますます図に乗り、付け上がり、組合員に対するパワハラ、不当労働行為の攻撃をかけてくるようになり、和解を振りかざして敵対する、会社の悪辣な行為によって我慢の限界を越えました。労働委員会では和解を取り止め、会社に対する「調査」、追及を再開しました。
会社はいよいよ追い詰められ、最近では、女性組合員へ配置転換を強行したり、高齢(80才)のパート労働者の組合員を、病み上がりにもかかわらず、40度近くになることもある高温の作業場で、いきなり働かせたり、とんでもないことをやっていきています。
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【香流工業分会】組合員へのパワハラ、不当労働行為を止める闘い
国内においては留まることをしならない物価高のなかにあって、全労働者数の大半を占める中小企業労働者の賃金は、物価高に追いつかず、実質賃金は低下し、貧困化しています。そもそも中小企業は大企業の下で、様々な面で抑えられ収奪されており、その付けが労働者に回ってくる構造があります。つまり、中小企業労働者が最も抑圧されているのが実際なのです。しかし、考えてみてください。机、いす、ボールペン、ノート、車、など、それぞれの部品一つ一つは全て中小企業が作っています。中小企業のとりわけ製造業の労働者の生産活動があってこそ、社会で必要な物が生み出され、社会が成り立っているのです。典型的な構造を挙げれば、トヨタ自動車は国際的にも日本を代表する大企業ですが、本社工場では厳密な意味で車を作っていません。たくさんの下請け、中小企業が製造し、納品させた部品を、組み合立てているだけです。大企業は下請け中小企業に支えられているのです。
現在の不況は、社会構造的なところに原因があり、これからさらに経済が低迷することは間違いありません。現場労働者、中小企業労働者が団結して生活と権利を守れるよう、香流工業がその先駆けとして、「会社あっての労働者、労働者あっての会社」を目指して奮闘しています。
日時 1月29日(日)
午後1時30分集合 午後2時デモ出発 午後3時集会
会場 亀戸中央公園
JR総武線亀戸駅下車6分 東武亀戸線亀戸水神駅下車1分
値上げラッシュに国民生活は疲弊しています。スーパーに行けば次々と食料雑貨品が値上がりし、食堂に行けば価格が上がり、電気・ガス代も上がり続け、さらにこれから運賃やタバコ、医療費も値上げされます。消費者物価指数は4%を超え、さらに企業物価指数が9.7%と史上最高となり、さらに消費者物価の値上げラッシュが続きます。
このなかで、東京23区、三鷹、武蔵野地区のタクシー料金が11月14日から値上げされました。値上げ幅が14.24%と大幅な値上げで、初乗り運賃は420円から500円、加算額が80円から100円になりました。
国土交通省関東運輸局は今回の値上げの理由を、①燃料費の高騰、②新車両やキャッシュレス決済機器の導入、③乗務員の労働環境の改善のため現行の運賃水準を維持できなくなった為と主張しています。
しかし、ロイヤルリムジングループ(金子健作代表)の2つの会社は、今回の値上げには理由がないとして「運賃値上げ見送り」を決断しました。その主張は、次のとおりです。
1)コロナによって傷んだ経済が回復していない中で、今回のインフレ率を大幅に超える14%のタクシー運賃値上げは、お客様の理解を得られない。
2)今回の運賃改定にあたり、燃料高騰に対する対応としてという理由を主にしているが、近年画期的で低燃費なハイブリット車両が導入され、むしろ燃料費は下がっている状況であり、更にこの車両の導入にあたっては、東京都及び国から多額の補助金を頂戴しており、今すぐ運賃に転嫁する理由は全くない。
3)むしろ直近の東京においては、繁忙時にタクシーが全く足りない大幅な供給不足を生じている状態で、今回最初に値上げ申請した業界大手の会社では、1台あたり1日6万円を越えるようなかつて無い高営収の状態になっている。
今回の消費者物価上昇4%を遥かに超える14.24%(初乗り80円)の料金値上げは、病院に通う高齢者などの財布を直撃し、物価高のラッシュで疲弊している国民の生活を直撃することは疑いありません。
しかし、国土交通省が、リムジングループの「企業努力で料金値上げ見送り、据え置きとする」との方針に対して、運賃値上げを命令し、従わなければ事業停止を命令する行政処分をするというのです。これは、タクシー料金は公定幅料金という決まりがあるからという理由です。公共交通における安全や労働条件を守るために、公定幅運賃という制度に合理性があるとしても、問題は「企業努力で料金値上げ見送り、据え置きとする」リムジングループに対し行政処分をするという国交省は、一体誰の顔を見て行政の権限を使おうとしているのかです。物価高で苦しむ国民か、それとも大手のタクシー資本の便乗値上げの要求の為か。
このタクシー料金14.24%の値上げが本当に必要なのか、実は周到に精査して決められたとは言い難いのです。国民が値上げに苦しんでいるのですから、公共交通機関であるタクシー料金も慎重に決めなければなりません。今回の値上げも大手4社はどのくらい値上げ幅を抑える努力をしたのか一切分かりません。
この事件は決して小さなことではありません。皆さんもご存じのように、政府は防衛費の増大を勝手に決め、国民も財源を責任をもって考えろと横暴な態度をとっています。リムジングループの国交省への異議申し立てを傍観し、孤立させることは、国の横暴な支配を許すことになります。経営努力で値上げをしないという道理を通すために私たち労働組合も声を上げなければなりません。
私たち労働組合は様々な階級階層の人々と協力して、政府と独占資本の強権的支配と闘っていく使命があります。この度のリムジングループへ運賃値上げの強制を許さず、国に正しい判断を下すよう行動を起こしましょう。
本社工場前でのビラまきの様子
香流工業について
香流工業株式会社は、愛知県長久手市に本社を置く金属部品製造業(亜鉛・アルミダイカスト産業)の会社です。金型製作、鋳造、加工、仕上げまでの工程を一貫生産で行っていることを強みとして成長を続け、現在は愛知県内に3工場、福井県に1つの営業所(金型製作)を所有しています。
主要な品目は自転車部品、自動車部品、釣り具部品、機械部品などです。特に、コロナ禍での海外の自転車ブーム、アウトドアブームにより自転車部品や釣り具のリール部品の受注が急増し、売上を伸ばし続けています。
従業員数は全工場を合わせて200名程度、正社員、パート・アルバイト、派遣社員、技能実習生と様々な雇用形態の労働者が働いていますが、その半数以上を外国人労働者と高齢のパート・アルバイトが占めています。
仕事は忙しくなっているのに、給料が下がった!?
香流工業は、全国の同業他社と比較しても、トップクラスの技術力と業績を誇りますが、賃金は愛知県の平均(金属製造業)よりも低く、昇給は役職につかない限り、ほとんどありません。人手不足も深刻で、平日の残業は当たり前で、土曜出勤が常態化しています。
コロナ禍でも受注が増え、それにともなって一人当たりの負担も多くなっていきましたが、給料は増えるどころか、減ってしまいました。2021年の4月、会社は賃金システムの改定を一方的に行い、皆勤手当や職務手当、家族手当がなくなり、基準が不明瞭な「等級制度」や評価手当が導入されました。結果として大多数の労働者が大幅な賃下げとなってしまいました。労働者にはなんの事前告知もなく、作業時間中に一人一人を呼び出して、「賃金システムの変更」が伝えられましたが、賃金が具体的にどのように変化するのかついては全く説明されず、翌月の給与明細を見てはじめて金額を知るような状態でした。
労働強化が進んでいる中で、大幅な賃下げが行われたことで、職場内の不平不満が一気に激化し、数名の労働者が労評愛知県本部に労働相談に訪れたことが、労働組合結成のきっかけとなりました。以降、労評愛知県本部の指導、援助のもと、労働者同士の話し合いを重ねてきました。生産を支え会社を支えている労働者が重んじられ、働く者の利益が守られるように会社を変えていくための、労働組合の政策と要求を示し、労働組合への組織化進めていくことによって、労評分会の結成に至りました
※労評香流工業分会の「結成宣言」はこちら
労働組合の登場によって、労働者の期待は高まっています!!
10月17日、会社への通知に先立って、本社工場、瀬戸工場、井戸金工場の3か所で労働組合結成を知らせるためのビラまきを行いました。いずれの工場でも、多くの労働者から、組合結成の趣旨や要求に対して支持、賛同の声が寄せられました。これまでの、「会社のやり方に疑問や意見はあるが、言えない。」「言ってもどうせ変わらない」という半ばあきらめていた状態から、変化のきざしが見え始め、会社が変わっていくことに期待が高まっています。
当面は、早期の団体交渉の開催と要求の実現を目指し、会社と交渉を進めていきます。労評香流工業分会の労働者は、「会社あっての労働者、労働者あっての会社」のスローガンのもと、香流工業を、もっと安心して、気持ちよく働ける職場へ、会社の考えが誰でもよくわかる会社へ、そのうえで納得のいく話し合いができる会社へ変えていくため、活動を開始しました。労評香流工業分会の闘いは、全国の中小企業製造業における労働運動の先駆けとなる闘いであり、労評内総労働をもって、力強く推し進めていきます。